フランス語のリエゾン、アンシェヌマン、エリジヨンってなに?

フランス語 リエゾン

フランス語を習い始めると、リエゾン、アンシェヌマン、エリジヨンというフランス語の発音に特有の現象を表す言葉に戸惑うかもしれません。

僕は多言語学習の過程でいろいろな言語に触れてきましたが、フランス語の綴りと発音の関係は比較的単純で覚えやすいと思います。

英語やデンマーク語のような綴りと発音の関係が複雑な言語は、コツを掴むのにある程度の時間を要しますし、中国語のような表意文字で表される言語は、文字ごとに読み方を覚えなければなりません。

「多言語学習の中村屋」では文字に触れる以前に大量に「聴くこと」を推奨していますが、いよいよフランス語の読み書きを習う段階に入ったときにリエゾン、アンシェヌマン、エリジヨンの本質をしっかり押さえておいた方が、後々の学習が楽になります。

ここでは、フランス語のリエゾン、アンシェヌマン、エリジヨンについて、例文を交えて解説しますので、最後まで読んでください。

目次

  • リエゾンとは?
  • アンシェヌマンとは?
  • エリジヨンとは?
  • 有音のhと無音のhについて
  • フランス語の綴りと発音の関係を体系的に理解しよう

1. リエゾンとは?

まずはリエゾンの前提となる知識として、フランス語の単語の語末の子音字は原則として発音しないことを覚えておきましょう。

例えば「croissant」(クロワッサン)の発音は [kʁwasɑ̃] となり、最後の「t」は発音しません。

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同じく「colis」(小包)の発音は [kɔli] となり、やはり最後の「s」は発音しません。

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ただしこれには例外も少なくありません。

例えば「parc」(公園)の発音は [paʁk]、「caramel」(キャラメル)の発音は [kaʁamɛl] 、「chef」(シェフ)の発音は [ʃɛf] というように、最後の「c」、「l」、「f」をそれぞれきちんと発音します。

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リエゾンとは、発音しない子音字で終わる単語の次に、母音で始まる単語が来る場合に、その子音字を発音して次の母音と繋げて読むという現象です。

ここで一つ例を挙げてみましょう。

「petit」(小さな)[pəti] + 「ami」(友達)[ami] → 「petit ami」(恋人)[pətit‿ ami]

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通常であれば「petit」(小さな)の最後の「t」は発音しませんが、次の「ami」(友達)が母音で始まるため、「t」と「a」が繋がって(リエゾンして)全体として [pətit‿ ami] という発音になります。

しかしながらこのような場合にリエゾンが必ず起きるとは限りません。

ではどうすればよいのでしょうか?

一つの目安として、必ずリエゾンが起こる四つのパターンを把握しておくことが役に立ちます。

  • 冠詞+名詞

【例1】

Les écoles ont une bonne réputation.

(それらの学校は評判がいいです。)

les écoles(複数の特定の学校)[lez‿ ekɔl]

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【例2】

L’augmentation de la population conduit à la nécessité de construire des écoles, des hôpitaux, et des parcs.

(人口が増えると、学校や病院や公園を建設する必要性が出てくる。)

des écoles(複数の不特定の学校)[dez‿ ekɔl]

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  • 指示形容詞+名詞

【例1】

Cet appartement a une superficie de 85m² et peut accueillir jusqu’à six personnes.

(このアパートの面積は85平方メートルで、最大6人まで住むことができます。)

cet appartement(このアパート)[sɛt‿ apaʁtəmɑ̃]

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【例2】

Qui est-ce qui a planté ces arbres dans le jardin ?

(誰がこれらの木を庭に植えたのですか?)

ces arbres(これらの木)[sez‿ aʁbʁ]

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  • 所有形容詞+名詞

【例1】

Vos élèves ne veulent pas que vous leur donniez autant de devoirs.

(あなたの生徒さんたちは、あなたにそんなにたくさん宿題を出してほしくないと思っています。)

vos élèves(あなたの生徒たち)[voz‿ elɛv]

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【例2】

J’ai besoin d’une bourse pour mes études à l’université.

(私は大学で勉強するのに奨学金が必要です。)

mes études(私の学業)[mez‿ etyd]

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  • 人称代名詞+動詞

【例1】

Ils ont une belle voiture de sport qui peut rouler à plus de 400 km/h.

(彼らは時速400キロ以上出るカッコいいスポーツカーを持っています。)

Ils ont(彼らは持っている)[ilz‿ ɔ̃]

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【例2】

Nous allons au supermarché pour acheter des aliments.

(私たちは食料品を買いにスーパーに行きます。)

Nous allons(私たちは行く)[nuz‿ alɔ̃]

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【例3】

Vous écoutez quel genre de musique ?

(あなたはどんなジャンルの音楽を聴きますか?)

Vous écoutez(あなたは聴く)[vuz‿ ekute]

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2. アンシェヌマンとは?

ある単語の次に母音で始まる単語が来る場合、その最初の単語の最後の子音が次の単語の語頭にあるかのように滑らかに繋げて発音することをアンシェヌマンと呼びます。

リエゾンとの違いは、その最初の単語の語末の子音字が本来発音されるという点です。

【例1】

Cet après-midi je suis allé au cinéma avec elle.

(今日の午後、僕は彼女と一緒に映画を観に行きました。)

avec elle(彼女と一緒に)[avɛk‿ ɛl]

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【例2】

Il aime faire du sport.

(彼はスポーツをするのが好きです。)

Il aime(彼は…を好む)[il‿ ɛm]

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【例3】

Le livre dont je t’ai parlé sera envoyé par avion.

(君に話した本は、航空便で発送される予定です。)

par avion(航空便で)[paʁ‿ avjɔ̃]

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アンシェヌマンは、フランス語以外の言語においても観察されますし、直観的にも理解しやすい現象なので、このような仰々しい名前を付ける必要はないかもしれません。

しかしながら、アンシェヌマンという概念を持ち出すことによって、リエゾンへの理解が深まるのであれば、このような命名にも意味があると言えるかもしれません。

3. エリジヨンとは?

ある単語の次に母音で始まる単語が来ると、その最初の単語の最後の母音字を省略してアポストロフ記号(’)を打つ場合があります。

これをエリジヨンと呼びます。

エリジヨンを起こす単語はごく僅かです。具体的には次の11語とその複合語しかありませんから、覚えるのは難しくないはずです。

le, la, je, me, te, se, ce, de, ne, si, que

【例1】

Lorsque l’ami de mon père a perdu son emploi, mon père lui a donné beaucoup d’argent pour l’aider.

(父の友人が失職したとき、父は彼を助けるために多額の金額を寄付した。)

「le」(その)[lə ] + 「ami」(友人)[ami] → 「l’ami」(その友人)[lami]

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【例2】

Mes parents m’ont finalement laissé partir seul en Afrique.

(両親はようやく私を一人でアフリカに行かせてくれた。)

「me」(私を)[mə] + 「ont」(…した)[ɔ̃] → 「m’ont」(私を…した)[mɔ̃]

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4. 有音のhと無音のhについて

フランス語では「h」は発音しません。

しかしながらリエゾンとエリジヨンに関しては、有音のhと無音のhの区別があります。

有音のhは子音として扱われるため、リエゾンもエリジヨンも起こりません。

【例1】

Je voudrais en apprendre plus sur le héros.

(私はその英雄のことをもっとたくさん知りたいです。)

le(その)[lə] + héros(英雄)[eʁo]  → le héros(その英雄)[lə eʁo]

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【例2】

Le président de la République française a félicité les héros des forces armées pour leur bravoure.

(フランス共和国大統領は、陸軍の英雄たちの勇気を賞賛した。)

les(それらの)[le] + héros(英雄たち)[eʁo]  → les héros(それらの英雄たち)[le eʁo ]

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一方、無音のhは母音として扱われるため、リエゾンもエリジヨンも起こります。

【例3】

L’hôtel est situé dans le 9ème arrondissement de Paris.

(そのホテルは、パリ9区にあります。)

le(その)[lə] + hôtel(ホテル)[otɛl]  → l’hôtel(そのホテル)[lotɛl]

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【例4】

Malheureusement, les hôtels à Manhattan sont trop chers pour nous.

(残念ながら、マンハッタンのホテルは私たちには高すぎます。)

les(それらの)[le] + hôtels(ホテル)[otɛl]  → les hôtels(それらのホテル)[lez‿ otɛl]

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有音のhで始まる単語は比較的少数です。いくつか例を挙げておきます。

la hache(斧)

la haie(垣根)

la haine(憎悪)

le hall(ホール、ロビー)

le hamburger(ハンバーガー)

le haricot(いんげん豆)

le hasard(偶然)

la hauteur(高さ)

la honte(恥)

le hoquet(しゃっくり)

huit(数字の8)

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5. フランス語の綴りと発音の関係を体系的に理解しよう

以上、フランス語のリエゾン、アンシェヌマン、エリジヨンについてまとめてみました。

文字を介さずにフランス語の音に慣れる初期の段階では知らなくても全く問題ありませんが、フランス語の文章を読む段階に入った人にとっては避けては通れない必須の知識ですので、この機会にきちんと整理しておきましょう。

           

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