フィンランド語の特徴をまとめてみました!

フィンランド語はその名の示す通り、フィンランドの公用語ですが、地理的に近いロシアやスウェーデン、ノルウェーなどで話されている言語とは大きく異なります。

それもその筈、フィンランド語は、ヨーロッパの大部分の言語が属しているインド・ヨーロッパ語族には属していません。

僕が多言語学習を始めた当時の基本的なスタイルは、このインド・ヨーロッパ語族の三大語派と呼ばれるゲルマン語派、ロマンス語派、スラヴ語派の中からそれぞれ選んだ一つまたは二つの言語をしっかりと学び、その後で、各語派に属する他の言語を攻略するというものでした。

具体的には英語とドイツ語を学んで得た知識をオランダ語、スウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語、アイスランド語の学習に活かし、フランス語とスペイン語を学んで得た知識をイタリア語、ポルトガル語、ルーマニア語、カタルーニャ語の学習に活かし、ロシア語を学んで得た知識をポーランド語、チェコ語、ウクライナ語、ブルガリア語、セルビア・クロアチア語の学習に活かすという感じでした。

しかしながら、ウラル語族のフィン・ウゴル語派に属するフィンランド語は、既習言語の知識を応用することができません。

それだけに初期段階の学習には根気が要りましたが、その反面、インド・ヨーロッパ語族に属する言語にはない特徴を備えたフィンランド語の魅力にどんどんハマっていったこともまた確かです。

ここではそんなフィンランド語の特徴を解説しますので、ぜひ最後まで読んでください。

目次

  • 母音調和
  • 否定動詞
  • 名詞の格変化
  • 子音階程交替
  • まとめ

1. 母音調和

フィンランド語にはa、o、u、i、e、ä、ö、yという8つの母音があります。

これらの母音は

①前舌母音(ä、ö、y)

②中立母音(i、e)

③後舌母音(a、o、u)

という三つのグループに分かれます。

これらのうち、①前舌母音と③後舌母音は、一つの単語の中に同時に現れることはありません

一方、②中立母音は、①前舌母音と一緒に一つの単語の中に現れることもあれば、③後舌母音と一緒に一つの単語の中に現れることもあります

このような規則を「母音調和」と呼びます。

なお、母音調和はフィンランド語に限らず、ハンガリー語やトルコ語においても見られる現象です。

ここで具体例としてフィンランド語の単語をいくつか挙げてみます。

           フィンランド語       日本語
koulu学校
joki
järvi
rakennus建物
isä
äiti
peili
katto屋根
ikkuna
kaunis美しい
yhdessä一緒に
pöllöフクロウ
taivas
aurinko太陽
lintu
paperi
koti
t仕事
verhoカーテン
tyyny

いかがでしょうか?

①前舌母音を赤、②中立母音を緑、③後舌母音を青で色分けしてみましたが、赤と青が一つの単語の中に現れることはありません。

つまり、①前舌母音と③後舌母音が同じ単語の中に現れることはないことが分かります。

2. 否定動詞

肯定文を否定文にする場合、インド・ヨーロッパ語族に属する多くの言語では、否定の副詞を加えます。

例えば英語では「not」、ドイツ語では「nicht」、フランス語では「ne~pas」、スペインでは「no」を使って否定の意味を表します。

その際、否定される動詞は、肯定文の場合と同様に、人称と数に応じて変化しますが、否定の副詞自体が姿を変えることはありません。

これに対してフィンランド語では、否定の意味を表す否定動詞が人称と数に応じて6通りに変化し、その後に続く動詞の現在語幹は不変です

ここで「泳ぐ」という意味の動詞を用いたフィンランド語の例文とスペイン語の例文を比較してみましょう。

   フィンランド語   スペイン語    日本語
Minä en ui.Yo no nado.私は泳ぎません。
Sinä et ui.Tú no nadas.君は泳ぎません。
Hän ei ui.Él no nada.彼/彼女は泳ぎません。
Me emme ui.Nosotros no nadamos.私たちは泳ぎません。
Te ette ui.Vosotros no nadáis.君たちは泳ぎません。
He eivät ui.Ellos no nadan.彼らは泳ぎません。

フィンランド語もスペイン語も動詞の形から主語が分かるので、主語人称代名詞を省略することが多々ありますが、ここでは便宜上、全ての主語人称代名詞を明示しました。

ちなみにフィンランド語には、英語の「he」と「she」のような三人称単数での男女の区別がありません。

つまり、「Hän」が彼という意味にも彼女という意味にもなります

このため、フィンランド語は男女平等の言語だと言われることもあります。

スペイン語では、動詞「nadar」(泳ぐ)が人称と数によって6通りに変化していますが、否定文においても否定の副詞「no」がこれらに先行しているだけなので、動詞の活用自体は同じです。

一方、フィンランド語では、動詞「uida」(泳ぐ)の語幹「ui」が全ての人称と数に共通しており、これらに先行する否定動詞が6通りに変化しているのが分かります。

これはインド・ヨーロッパ語族に属する言語では決してお目にかかれない、フィンランド語のユニークな特徴と言えるでしょう。

3. 名詞の格変化

ドイツ語やルーマニア語の名詞には4つの格(主格、属格、与格、対格)が、ロシア語の名詞には6つの格(主格、属格、与格、対格、造格、前置格)があります。

ポーランド語やチェコ語などのスラヴ諸語の名詞は、これに呼格(~よ!)を加えて7つの格があるとされています。

これだけでも大変そうに見えますが、フィンランド語の名詞にはなんと14の格変化があります!

以下、家や建物を意味する「talo」という名詞を例にとって、これらの格を具体的に見ていきましょう。

ちなみに左側の列は単数形の格変化、右側の列は複数形の格変化を示しています。

1. 主格(~は、~が)talotalot
2. 属格(~の)talontalojen
3. 分格(~を)taloataloja
4. 内格(~の中に、~の中で)talossataloissa
5. 出格(~の中から)talostataloista
6. 入格(~の中へ)taloontaloihin
7. 接格(~の表面に、~の表面で)talollataloilla
8. 奪格(~の表面から)taloltataloilta
9. 向格(~の表面へ)talolletaloille
10. 様格(~として)talonataloina
11. 変格(~になって)taloksitaloiksi
12. 欠格(~なしで)talottataloitta
13. 具格(~を使って)talointaloin
14. 共格(~と共に)taloinetaloine

確かにこのような格変化を覚えるには根気が要りそうですが、14×2通りの格変化を丸暗記しなければならない訳ではありません

例えば内格と出格はどちらか一方が分かれば他方を導くことができますし、接格と奪格についても同様のことが言えます。

また、ある格の単数名詞に、複数を示す印「i」を加えるだけで、同じ格の複数名詞を導くことができるケースも少なくありません。

4. 子音階程交替

フィンランド語には、k、t、pという3つの子音に関して、名詞の格変化や動詞の活用に際してその数や音質が変化するというユニークな現象があります。これを子音階程交替と呼びます。

まずは難しいことは抜きにして、下の表をご覧ください。

       強階程        弱階程
① kk① k
② k② ―(なし)
③ pp③ p
④ p④ v
⑤ tt⑤ t
⑥ t⑥ d
⑦ lt⑦ ll
⑧ nt⑧ nn
⑨ rt⑨ rr
⑩ nk⑩ ng
⑪ mp⑫ mm

例えばフィンランドの首都ヘルシンキを意味する固有名詞「Helsinki」を格変化させる場合を考えてみましょう。

Minä menen Helsinkiin.(私はヘルシンキに行きます。)

この例文では入格(~の中へ)が使われていて、「Helsinki」が「Helsinkiin」となっています。

Minä asun Helsingissä.(私はヘルシンキに住んでいます。)

「Helsinki」を内格(~の中に、~の中で)にすると「Helsinkissä」となりそうですが、そうはならず「k」の音が「g」の音に交替しています。つまり、⑩の子音交替が起こっています。

Minä olen Helsingistä.(私はヘルシンキの出身です。)

この場合も「Helsinkistä」ではなく「Helsingistä」となっています。やはり⑩の子音交替が起こっています。

このような子音交替は、動詞が人称と数に応じて活用する際にも起こります。

動詞liikkua(動く)の現在形活用

階程交替①(kk:k)

minä(1・単)liikun
sinä(2・単)liikut
hän(3・単)liikkuu
me(1・複)liikumme
te(1・複)liikutte
he(3・複)liikkuvat

動詞lukea(読む)の現在形活用

階程交替②(k:―)

minä(1・単)luen
sinä(2・単)luet
hän(3・単)lukee
me(1・複)luemme
te(1・複)luette
he(3・複)lukevat

動詞tappaa(殺す)の現在形活用

階程交替③(pp:p)

minä(1・単)tapan
sinä(2・単)tapat
hän(3・単)tappaa
me(1・複)tapamme
te(1・複)tapatte
he(3・複)tappavat

動詞saapua(到着する)の現在形活用

階程交替④(p:v)

minä(1・単)saavun
sinä(2・単)saavut
hän(3・単)tappaa
me(1・複)tapamme
te(1・複)tapatte
he(3・複)tappavat

動詞ottaa(取る)の現在形活用

階程交替⑤(tt:t)

minä(1・単)otan
sinä(2・単)otat
hän(3・単)ottaa
me(1・複)otamme
te(1・複)otatte
he(3・複)ottavat

動詞tietää(知っている)の現在形活用

階程交替⑥(t:d)

minä(1・単)tiedän
sinä(2・単)tiedät
hän(3・単)tietää
me(1・複)tiedämme
te(1・複)tiedätte
he(3・複)tietävät

動詞kieltää(知っている)の現在形活用

階程交替⑦(lt:ll)

minä(1・単)kiellän
sinä(2・単)kiellät
hän(3・単)kieltää
me(1・複)kiellämme
te(1・複)kiellätte
he(3・複)kieltävät

動詞lentää(飛ぶ)の現在形活用

階程交替⑧(nt:nn)

minä(1・単)lennän
sinä(2・単)lennät
hän(3・単)lentää
me(1・複)lennämme
te(1・複)lennätte
he(3・複)lentävät

動詞ymmärtää(理解する)の現在形活用

階程交替⑨(rt:rr)

minä(1・単)ymmärrän
sinä(2・単)ymmärrät
hän(3・単)ymmärtää
me(1・複)ymmärrämme
te(1・複)ymmärrätte
he(3・複)ymmärtävät

動詞onkia(釣る)の現在形活用

階程交替⑩(nk:ng)

minä(1・単)ongin
sinä(2・単)ongit
hän(3・単)onkii
me(1・複)ongimme
te(1・複)ongitte
he(3・複)onkivat

動詞ampua(撃つ)の現在形活用

階程交替⑪(mp:mm)

minä(1・単)ammun
sinä(2・単)ammut
hän(3・単)ampuu
me(1・複)ammumme
te(1・複)ammutte
he(3・複)ampuvat

いかがでしたか?

勘のいい方ならお気づきかもしれませんが、強階程が現れるのは三人称だけです

また、一見複雑に思われる①から⑪の子音階程交替のパターンも、強階程から弱階程への移行に関して、以下の二点を把握しておけば理解するのが容易になります。

1. k、t、pのいずれかが消えるか、数が減る

2. k、t、pのいずれかが有声子音g、d、vにそれぞれ変化する

5. まとめ

以上、母音調和、否定動詞、名詞の格変化、子音階程交替というフィンランド語の4つの特徴を重点的に解説しました。

慣れるまでに多少時間がかかるかもしれませんが、このようなユニークな特徴を備えたフィンランド語をレパートリーに加えることによって、多言語学習の楽しさが増幅することは間違いありません。

もちろん、多言語学習の中村屋が推奨しているように、本記事で解説したことを体得する大前提となるのが、フィンランド語の音声をたくさん聴いて、そのメロディーやリズムを体に染み込ませることです。

これなら難しく考える必要はありませんし、誰でも気軽に取り組めますから、少しでもフィンランドに興味や関心をお持ちの方は、ぜひフィンランド語学習の第一歩を踏み出してみてください。

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